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【ネタバレあり】「物語を終わらせる」ということの意味【感想:仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル】

 

仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル」を見た。

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世間では賛否両論きっぱり分かれているらしく、理解も出来る。

 

しかし、結論から言えば、私自身は圧倒的「賛」を送りたい。

それほどまでに、この作品、そしてこれを作った制作陣・俳優陣の「覚悟」に圧倒されてしまった。

 

 

1.ここ最近の仮面ライダーオーズの扱いが苦手だった

正直言えば、見る前は完全にこの作品をナメていた。

なんなら、情報発表時点でナメ切っていたといってもいい。

 

 

 

 

ここまで期待値が下がり切っていたのには複数の原因があるが、やはり「平成ジェネレーションFINAL」で出されたアンクにまつわるシーンが大きな原因になっている。

 

「映司とアンク」を超えて「渡辺秀と三浦涼介」本人たちの熱量(悪く言えば湿度感)が表に出すぎているシーンの数々や、無理に最終回シーンを再現するために建てられた財団Xのバカの塔などなどが正直、否定するほどではないが好みでは無かった。

 

www.jigowatt121.com

 

※続編発表当時の気持ちとしては、わざわざ私が改めて書くまでもなく上記ブログが非常にわかりやすく、かつコミカルに纏めてくださっているのでそちらを参考にして頂きたい。

 

これらを踏まえて、「復活のコアメダル」に対しては、「どうせ土壇場でアンクが復活してタジャドルエタニティで見せ場作って、またじっとり見つめ合う映司とアンク、みたいな感動の再会で終わる感じなんでしょ」というある種の諦めに近い、地中に埋めきったハードルで臨んだ。

 

そのナメ切った姿勢は、本編開始早々に裏切られた。

 

2.当時のスタッフによって作られる「新鮮味のある完結編」という不思議

いつもの東映マーク、Vシネクストマークを経て、さあいよいよ本編……!

 

なんといきなり、映司の声に導かれるように割れたタカメダルが復活した。

この時点で予想を大きく、いい意味で裏切ってくれる展開に一気に引き込まれた。

 

いやまだわからない、Vシネの尺都合でどうせわかってるアンク登場の過程を端折っただけかもしれない…などなどこちらが疑いに疑ってかかる目を、真っ向から否定してくれるシーンが次々に出てくる。

 

明らかにおかしい「ゴーダが演じる映司とアンクの出会い」、比奈ちゃん交えた3人で談笑するも拭えない違和感、告げられる「火野映司の肉体の死」……

これまでのオーズ作品と正反対に「火野映司を追い求めるアンク」が描かれる異色さで、知っている作品の完結編なのに、新鮮な気持ちでワクワクしながらスクリーンに釘付けになっていた。

 

古代王オーズと映司の戦いに、オーズ名物と化した「瓦礫の中にたたずむ子供」が現れた時には正直笑ってしまったが、そういった悪い意味での与太話要素も少なくグイグイと話が進んでいく。

 

予告映像で「仮面ライダーゴーダ」の存在を知っているだけに、人造グリードという立場故に人間にも親しげに接するゴーダ映司に対して常に不穏な空気が漂う古代王オーズ戦。

 

そしてゴーダがついに自身の欲望に従い「仮面ライダーゴーダ」に変身し、連鎖的に明かされるアンク復活とその代償。

 

事前情報で「そりゃお祭りフォームの1つくらいあるよね」とナメ切っていたタジャドルエタニティについても、

1.グリードであるアンクが

2.巨大な欲望の器である火野映司の身体を使い

3.自身のコアメダルで変身した姿

とまでやられてしまってはもう納得せざるを得ない。

「映司のやりたかったことをアンクが叶える」

「映司の声をドライバー音声に乗せる」

「オーズの動きに合わせて映司のビジョンが現れる」

普段であれば「また最終回のシーン擦ってるよ…^^;」と辟易しそうな、最終回の真逆を行くようなセルフオマージュの数々も、この流れを汲まれた今回ばかりは「良い」。むしろここでやらなければ嘘だろう。

映画館でなければ声を上げ、Twitterには雄叫びツイートを連投していただろう。

 

そして訪れるエンディング。

かつての泉信吾とアンクのように、アンクが寄生することで映司が生きながらえ、比奈ちゃんも交えて疑似的に「10年前のあの頃のように、3人で」とする終わりにはしなかった。

 

10年間愛され続けたキャラクターであり、作中でも「明日のパンツ」「いつかの明日」などの「未来」を強く唱え続けた火野映司その人こそがあっけなく死ぬ。

このラストに強く心を打たれ、ここで初めて「賛否両論」であるという意味がはっきりとわかった。

 

と、同時に私の中でこの作品が圧倒的に「賛」に決まった。

 

3.「物語を終わらせる」ということ

 

話は逸れるが、世の中で美しいコンテンツの閉じ方を挙げろ、と言われれば私は「ニューダンガンロンパV3」を強く推す。

 

 

詳細は省くが、アニメを始めとしてメディアミックスも大きく拡大し、これからいくらでも続きが作れるダンガンロンパという作品群に対して、作り手側が強くNO!を叩きつけて「ダンガンロンパ」というコンテンツを閉じた。

 

作者自身による介錯とも取れる、この「覚悟」と同種のものを、私は今回の「復活のコアメダル」に感じた。

 

MOVIE大戦MEGA MAXで「いつかの明日に、アンクは蘇る」というゴールを示している以上、その間はどうとでもできてしまう。

さらに言えば「アンク復活後も、映司はアンクを相棒として世界中の人々に手を伸ばし続けました」なんて展開になったことにしてしまえば、いくらでも「映司とアンクの再会」で作品は作れてしまう。

 

しかし、「10周年を迎えて作るオーズ完結編」において、制作陣はこれを良しとしなかった。パンフレットインタビューを読めば、俳優陣も今回の結末を上手く呑み込めていなかったり、田崎監督や脚本の毛利さんですらも、賛否両論あるだろうことを理解している。

10年間愛され続けた作品の完結編として、賛否両論あるだろうことは予期しつつも、「完結編」を名乗るからには火野映司の度にピリオドを打つ。火野映司の物語をここで終わらせる。

その覚悟にこそ、私は1番に感動し、賛否両論の「賛」側に立たずには居られない。

 

ありがとう。仮面ライダーオーズ

 

4.余談:考察とかあれこれ

アンクの復活

アンクの復活について皆さんはどう見ているだろうか。

映司が残った命を分け与えた?その時不思議なことが起こった?

 

個人的には「火野映司が持つ欲望というエネルギーが全て一点に収束した結果」ではないかと捉えている。

 

TV本編でも描かれた通り、火野映司は巨大すぎるほどの欲望の器を持っている。

空っぽになってしまったその器に、自分の「欲」を詰め込めるようになるまでが仮面ライダーオーズ本編だった。

 

きっとこの10年、新しく欲望が増えていく中でも、その器にはずっと「戦地で少女を救えなかった事への後悔」や「アンクを復活させるという願い」があった。

 

古代王オーズから少女を救い、あの日できなかった後悔を1つ消化した。

代償に自分の命が失われるその瞬間になって、火野映司の意思・願いが、他の些事を差し置いて「アンクを復活させたい」という純粋な願いに向いた、あくまでその結果として、映司自身が持つ欲望のエネルギーがアンクを復活させたのではないか、という考え方をしている。

 

映司自身に「残りの命を差し出せばアンクが蘇る」などの打算があったわけではなく、あくまで結果であってほしい、そういう私の祈りでもあるので明確に根拠があるわけではない。

 

えっ!?ガタキリバ出るの!?Vシネの予算感で!?

オーズ放送当時からの鉄板ネタと化していた「ガタキリバは映司の身体と予算への負担が大きいから使えない」説。

 

まさかVシネクスト枠であるオーズ10thで観れるとは思って居なかった。

流石に分身の数は控えめではあったが、それでもあの集団取り囲みオーバーキルキックが見れるとは思っていなかった分、喜びが強かった。

余談の余談:ゼロワンVシネの仮面ライダー滅亡迅雷が、折角の強化形態なのにステゴロ戦ばかりだったり各種エフェクトがしょぼかったりで悲しい思いをしたので、ちゃんと必殺技演出があるのはかなり嬉しい。

 

もしかしてTVシリーズのどこかのシーンからCG流用したのかもしれないが、そういった探し物は識者に任せるとしよう。

 

グリード退場のスピード感で草

「ウヴァさんには今回もギャグシーンが準備されているらしい」と事前に知っていたので、オーズ(ゴーダ)討伐にウヴァさんが「俺1人で十分だ」と勢いよく出向いた時点でもう既に笑いをこらえてしまうくらい面白い。

 

その後も、鉄板ギャグの「虫けらが…」も披露してくれるし、ちゃんとコアメダルも奪われてくれるし、コアメダル1つで動き回るし、結局は古代王オーズにメダルに分解されるシーンでDr.真木相手の情けなさも再演してくれるしと、「ウヴァさん、愛されてたな……」とついついリアタイ当時のウヴァさん弄りを懐かしんでしまった。

 

「それにしてもウヴァさん大活躍だな、これは他グリードのハードルも高いぞ…(それにしてもメズール人間態の色気すごいな……)」と思っていたのも束の間、古代王オーズにあっさりメダルに分解されるカザリ・メズール・ガメルと、どう見てもタマシーコンボの肩じゃねえか!なパワーアップをする古代王のスピード感、じわじわと染み入る面白さだった。

 

若干の「非」

仕方ないことではある。10周年記念作品で、完結編で、オリジナルキャスト勢ぞろいとなれば、それだけ俳優陣が「仮面ライダーオーズ」を愛してくれているということだろう。

そのクォリティとトレードオフなのはわかる。

わかる。

わかるけど。

 

精神世界での三浦涼介、泣きすぎ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

あくまで個人的なアンク観なので、万人に押し付けるわけではないが、アンクと言えばもっとこう、ニヒルな気取った皮肉屋だが激情を内に隠しており、その発露は主に「怒り」であることが多い印象なのだ。

 

映画内でも流れた最終回、「満足いくことがあるか!」「お前の掴む腕は、もう俺じゃないって事だ」と別れるシーンでは一切湿っぽい空気を出していなかった当時の印象が強すぎるだけに…という、一方的にこちらが期待して思い入れを深くしてしまったのもあるが、やはりアンクにはもう少しドライなキャラを貫いてほしかったな…という気持ちがある。

 

あとアンクくん、そんなに名前呼びに固執するタイプじゃなかったよね?ゴーダに呼ばれるのめっちゃ嫌がってたけど……?

 

5.総括

仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル、初日に映画館で見て良かったです。

 

思い出したように時たまダラダラと商業展開して、そのうちボヤっと自然と風化していくより、10周年という節目で、当時のキャスト・スタッフから好きな作品に結末が与えられたということが本当にうれしい。

 

このVシネと同時期に言及されていた仮面ライダードライブにおけるチェイスの復活については(プロデューサーも違うし)不安を感じつつも、その時が来るのをじっくり待ちたい。

 

とりあえず今は、オーズTV本編を見返すことにする。